タイトル
著者
ジャンル 出版社 発表年(初出)
手塚治虫初期傑作集D
弁慶

手塚治虫
ハードカバー 小学館 1953
  ※1992年に小学館より再版
弁慶の波乱万丈の生涯を描いた手塚治虫の初期作品。気は優しくて力持ちな弁慶、アトム的イイ子の牛若義経、典型的な悪役頼朝。あくまでも絵本的世界なのでリアリティや重厚さを求めるわけにはいきませんが、こういう昔ながらの単純明快なヒーロー物語は義経ファン的には大満足。少なくともこの20年以上あとに描かれた「火の鳥・乱世編」よりはずっと素直に楽しめます。
★★★★
 
古典名作漫画選D
弁慶

太田じろう
―― 曙出版 1969
弁慶の生涯を、伝説に即しつつオリジナル色豊かにコミカルに描いた作品。数々の不遇に耐え、美女玉虫に恋焦がれ、各地を流浪する暴れん坊主・弁慶。五条大橋で牛若丸と出会ってからは、ダイジェスト的に話がちゃっちゃと進んでしまうのが残念。
★★
火の鳥・乱世編
(上下)

手塚治虫
文庫(再版) 角川書店 1978〜80
  巨匠・手塚氏の一大叙事詩「火の鳥」、その源平時代編「乱世編」。ここに登場するのは傲慢、冷酷、自分勝手な極悪義経。直情家で政治的野心がないというピュアな面も一応フォローされてはいますが、全体的なイメージはやっぱりとほうもないワル。弁太、という弁慶を思わせるキャラが、そんな義経の横暴に振り回され苦しめられてついにキレ、最後に義経を…。前述作品「弁慶」との落差をお楽しみくださいと言わんばかりのヤな感じの主従です。ちなみに頼朝は旧作「弁慶」と見た目も性格もまったくおんなじ悪キャラ。逆に清盛は悪人に見えて実はいい人という、マンガにありがちなお約束キャラ。個性豊かな登場人物が多数登場しますが、極悪義経のインパクトの前にはすべてがかすむ。こういう義経もアリだとは思うけど、描写にまったく愛が感じられないのが寂しい。手塚先生、義経嫌いなのかな…。
★★
  
義経の赤い春

ひさうちみちお
ハードカバー 角川書店 1987
  牛若と弁慶が五条大橋の決闘に至るまでを描いた物語。キーパーソンは牛若のすぐ上の兄・円成。平家打倒のため牛若を引き取り、ほとんど主役ばりに活躍(暗躍?)します。「義経記」からの引用エピソード(伊勢三郎との出会い、鬼一法眼の娘皆鶴との交流など)も多々ありますが、全体的にはほとんどオリジナルの物語。映画「五条霊戦記」とどこか通じるところがあるかも。しかし、淡泊ながらオカルティック、なおかつ艶めかしい独特の絵柄が印象的すぎて、読後に奇妙な後味の悪さが残ります。
★★  
歴史コミック
源義経
(全4巻)

堀江卓
A4版コミックス 講談社 1990〜91
  「歴史コミック」シリーズの義経編。劇画タッチの濃い絵柄、骨太ダイナミックな物語展開…、マンガというよりは「読む時代劇」。ムササビを自在に操る鞍馬天狗、奥州に土着しているモンゴル人集団など、独特の設定もあるにはあれど、基本的には史実に即してきちんと書かれたマニュアル的大河ドラマです。
★★★
  
歴史コミック
劇画藤原四代

監修・永井豪/原作・大崎悌造
画・和田順一
コミックス 日本文芸社 1993
  奥州の覇者・藤原一族!源頼朝を、そして朝廷をも脅かした“北の脅威”藤原氏の興亡の歴史とは!?
大河ドラマ「炎立つ」放送に合わせて描かれたと思われる、奥州藤原氏四代の物語。奥州の盛衰のあらましがざっとわかる教養マンガです。したがって義経の出番はそれほどない…けど、むさ苦しい男どものなかにあって終始好青年に、しかも何気にかわいく描かれているのがちょっとだけうれしい。
★★
  
吉次と義経
藤原四代の野望
(1巻〜)

原作・杉山光男/画・小島剛夕
少年キャプテン 徳間書店 1993
  たぶんこれも「炎立つ」と連動掲載されたマンガ。吉次が鞍馬の天狗となって遮那王を教え導く物語。絵柄の泥臭さと時々出てくるポルノチックな場面には当惑しちまいますが、武芸に長けたしぶい吉次、一本気な遮那王、何やら腹に秘めてる頼朝など、一癖ありそうなキャラクター揃い。彼らがどうからんでゆくのか興味をそそられます。が、一巻(奥州くだりの途中)までしか出てない…
★★
 
歴史コミック
奥州藤原四代(青き蝦夷の血)
(第3巻)

原作・今東光/画・横山まさみち
コミックス 講談社 1994
  奥州戦国時代の武将群〜今東光の歴史大作、初めてコミック化なる!!
「歴史コミック」シリーズの奥州藤原氏編。こちらも「炎立つ」に合わせての企画でしょう。原作小説を読むための入門編としてよいのではないでしょうか。
★★
  
安東 ANTON
(全3巻)

安彦良和
ノーラコミックス 学習研究社 1993〜95
  炎の如く 源義経の忘れ形見、星若丸、見参――!!
奥州で育った義経の遺児・星若が、打倒鎌倉のため奮闘する物語。アニメーターでもあるこの作家さんの圧倒的な画力にはただただ脱帽、絵だけでものすごい説得力です。キャラクター勢も異色揃い。つねに能面をつけた不気味な北条義時、もーどうにもならんほどマッドなバカ殿頼家。彼らが星若をとことん追いつめ、いたぶるのだ。読みごたえ十分。十分すぎて、読後に何だか疲労感すら覚えます。
★★★
  
マンガ日本の古典
吾妻鏡
(上中下)

武宮惠子
文庫版コミックス 中央公論社 1994〜96
  (2000年に文庫版として再版)
※04年に嶋中書店アイランドコミックス(全2巻)として再販
鎌倉幕府公用の記録書を物語化。源頼朝の実像に迫る
少女マンガ界の重鎮・武宮惠子氏が描く古典・北条氏の記録「吾妻鏡」。鎌倉幕府の草創期を手っ取り早く知る資料として重宝です。武宮氏の描く義経は純真で繊細な美形の優男。頼朝も美男に描かれてはいますが、冷酷でやな奴です。対して北条政子が「ウーマンリブ」の象徴としてやたらと持ち上げられているのは、原典に即して描けば当然の結果でしょうが、武宮氏の意向もかなり入っておりましょう。NHK大河「草燃える」とダブる(ような)シーンもあります。
★★★
  
マンガ日本の歴史
(第15巻)

石ノ森章太郎
文庫版コミックス 中央公論社 19?〜?
  ※1997年に文庫版として再版
「日本の歴史シリーズ」源平合戦の巻。頼朝は血も涙もない老獪な政治家として、義経は野心のないさわやか好青年として、従来どおりのイメージで描かれてます。時代背景を捉えるには一番の、スタンダードな歴史入門マンガ。この巻だけでなく全巻を通して読みたいところですが、全55巻。(ヒィ)
★★★
  
永井豪のサムライワールドI
豪談・武蔵坊弁慶

永井豪
ハードカバー 中央公論社 1998
  ※リイド社より再版
比叡山の破戒僧・弁慶とその兄弟子源空が、平清盛に取り憑いた魔人・安倍晴明と戦う物語。最後のほうでやっと牛若義経登場、そこからはあっというまに話が進んで晴明をやっつけ平家を滅ぼし奥州が滅び、弁慶と義経は意気揚々と一路大陸へ…ジンギスカンになるつもりなのね…。絵柄も話もひたすらダイナミックでテンション高くてお色気もちょっぴり、ついていくのが大変です。そりゃあキューティーハニーやデビルマンの人ですから。
★★
  
NHKその時歴史が動いた
宿命のライバル編

〜互いを認め合い
勝負を挑んだ英雄たち〜
文庫版コミックス 集英社 2004
  小次郎敗れたり 決闘巌流島・宮本武蔵の執念(作画・鴨林源史)
激突武田信玄と上杉謙信 川中島の戦い、両雄決戦の時(作画・小川おさむ)
弟・義経を討て 源頼朝・武家政権確立への決断(作画・ながいのりあき)
秀吉・家康たった一度の直接対決 天下取りの知恵くらべ(作画・谷口敬)
さらば淀殿お初の決断 運命に立ち向かった戦国三姉妹(作画・柳リカ)
敵は本能寺にあり 光秀はなぜ主君信長を裏切ったのか(作画・たかや健二)
NHK人気番組「その時歴史が動いた」のコミック版。ドキュメンタリー色が薄まっている分純粋な歴史ドラマとして楽しめます。「弟・義経を討て」は義経討伐にいたる頼朝の言い分がよくわかります。頼朝視点なので義経が能天気キャラになってるのは致し方なし。でもおまけマンガで世界征服たくらむほどの思いあがりバカにされちゃってるのにはカチンとくる。
★★★
  
NHKその時歴史が動いた
策士・軍師編

〜知略と勇気を兼ね備えた
戦いの天才たち〜
文庫版コミックス 集英社 2004
  肉を切らせて骨を断つ 織田信長捨て身の復讐戦(作画・池原しげと)
秀吉に天下を取らせた男 黒田官兵衛戦国最強のナンバー2(作画・谷口敬)
源義経・大水軍を奪い取れ!壇の浦の戦い、奇跡の逆転劇(作画・狩那匠)
真田幸村どん底からの挑戦 家康を追いつめた伝説の名将(作画・沖圭一郎)
坂本竜馬 幕末の日本を動かす(作画・柳リカ)
高杉晋作50倍の敵を制す必勝戦略 幕末長州奇跡の逆転劇(作画・大林かおる)
こちらは義経の「戦略(戦術)家」としての才能にアプローチ。その失脚の原因についても言及されてます。それにしても上記「宿命のライバル編」といいおまけマンガの義経はきまって性格が悪い。せっかく本編マンガで感動したってこれでチャラですわ。
★★★
  
NHKその時歴史が動いた
智将・猛将編
文庫版コミックス 集英社 2005
  義経はなぜ死んだのか 源頼朝と奥州藤原氏の攻防(画・西田真基)
我が運命は民と共に 悲劇の英雄楠木正成の実像(作画・谷口敬)
武田信玄 地を拓き水を治める戦国時代制覇の夢(作画・ながいのりあき)
信長と道三 改革者を生んだ非情の絆(作画・小川おさむ)
関ヶ原合戦 家康なぞの大突撃ヨーロッパ製甲冑の威力(作画・狩那匠)
義経と頼朝の兄弟不和、その背景にある奥州藤原氏と鎌倉との息づまる攻防にスポットを当てた作品。絵的には義経が悪役みたいなキツい顔になっててちょっとアレですが、キャラ的にはピュアな好青年。よしよし。おまけマンガではサッカー選手義経と監督頼朝の息づまる攻防(?)が楽しめます。
★★★
  
NHKその時歴史が動いた
源平争乱・元寇編
文庫版コミックス 集英社 2008
  源頼朝 富士川の戦い(作画・加藤礼次朗)
源義経 流浪の果ての悲劇(作画・春日光広)
蒙古襲来、竹崎季長の一番駆け(作画・池原しげと)
蒙古襲来、再びの撤退(作画・田辺節雄)
孝謙天皇と道教の許されざる恋(作画・井沢まさみ)
足利義満の日明外交(作画・ながいのりあき)
源氏再興に立ち上がった頼朝、平家を滅ぼした義経、それぞれの視点を通して源平争乱の時代の真相に迫ります。「富士川の戦い」では頼朝が聡明なイケメン棟梁に、「流浪の果ての悲劇」では義経が一途で純真な悲劇の英雄に描かれていて、どちらのファンにも納得の内容。ただしおまけマンガには衝撃の「デブ頼朝」「怨霊生首兄弟」が登場します。(笑)
★★★★
  
源義経

〜乱世を駆け抜けた
天才武将の一代絵巻〜


佐野絵里子
SPコミックス リイド社 2005
  勇往邁進!源平時代を疾風の如く駆け抜けた天才武将・源義経の生涯を苛烈に美しく描く一代絵巻!
絵巻ふうの風雅な絵柄が味わい深い義経一代記。その数奇な生きざまがクールかつポエジックに描き出されています。哀しく激しく、そしてきりりと美しい義経のキャラクターがたまらなく魅力的。著者の解説コラムも収録されていて読み応えがあります。これをぜひ長編マンガで読みたい!
また同著者の短編コミック集たまゆら童子(リイド社)には、常盤御前の母性愛を描いた「寒雀」、牛若のヤンチャな鞍馬生活を扱った「閑日」ほか、源平時代にまつわる物語がいくつか収録されており、哀切な題材がほのぼの優しいタッチで描かれています。こちらもオススメ!
★★★★★
  
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